超巨大轟雷の日課パトロール

近未来―。
運用試験が完了したフレームアームズ・ガール達は
現実での戦闘用の超巨大なボディにそのAIを移し、
国防を一手に担っていた。
轟雷も例に漏れずその凄まじい大きさの体を活かし
日々国土の周辺海域の見回りを行っている。
「……国民IDの提示をして下さい」
轟雷の感情のこもっていない声が響き渡る。
無表情で見下ろす右手の上には観光用の豪華客船が
乗せられ、その中でうごめく何千人もの人々を
その目が探知していた。
重量20万トン、全長300mを超える巨大な船で
あっても、轟雷にとっては片手に乗る玩具のよう
だった。海上に浮かんでいたそれを轟雷がスキャンした
所、乗客の中に数名国民カードを所持していない者が
見つかった。
国の安全を守る為にも見過ごすことは出来ない法律
違反だ。轟雷は右手の上で必死に叫ぶ3,000人を超える
人々を無表情で見下ろしながら、違反者の出頭を待つ。

「……時間切れです」
轟雷の右手の指がゆっくりと内側に折り込まれて
いく。直径数十mもの巨大な柱のような5本の指が
豪華客船を歪ませながらその船体にめり込み、
金属がひしゃげる不気味な音が鳴り響く。
頑丈なはずの巨大豪華客船がまるで紙のように
引き裂かれ、圧縮され、ぐちゃぐちゃに粉砕され
ていく。
船内でいくつもの爆発が巻き起こり、その熱と
衝撃で乗客が吹き飛び、焼かれ、死滅していく。
その凄まじい爆発も轟雷には微塵も効いていない
ようで、変わらぬスピードで右手を握りながら
生き残りがいないように念入りに指を動かし
船体を磨り潰していった。
「……任務完了。生存者0」
違反を犯すものは一匹たりとも逃さないFAG。
たとえ無関係な人々が巻き込まれたとしても、
国の安全の為に犯罪者を逃す事は出来なかった。
轟雷が右手を開き、もはや原形すら分からなく
なった豪華客船を地上に向けて捨てる。
本来なら南の島に向かうはずだったその船と数千人
もの乗客は、たった数人の違反者の為にゴミの
ように超巨大FAGに握り潰され、処理されてしまう
のだった。

